株式会社Y's upの不動産業ブログ

賃貸退去トラブル

画びょうやピンの穴はOK…? 不動産専門家が教える! 賃貸退去トラブルを避ける方法と対処法

秋は企業の転勤等で引っ越しが多くなるシーズンです。
旧居を引き払う際に、どのような点に注意すればいいのでしょうか? 知らずにいると退去費用がかさんで大損することになりかねません。
そこで今回は、退去費用で勘違いしがちな項目や、注意しないと退去費用が高くなってしまうポイントなどについてです。

大部分の人が泣き寝入り…。高額な退去費用を払っている!?

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――不動産・住宅情報サービス「LIFULL HOME’S(ライフルホームズ)」が、5年以内に賃貸物件からの引っ越しを経験した1075名を対象に実施したアンケート「退去費用は入居者負担?間違えがち項目ランキング」(※1)によると、賃貸物件の退去費用について「納得がいかなかった」という声が半数以上の51.6%を占めています。どんな点で納得がいかなかったと感じる人が多いのでしょう?

渋谷さん 大きく分けると2つあると思います。ひとつは、入居時からあった傷や汚れなのに請求されてしまったというもの。

 

もうひとつは、通常の生活を送る中で生じてしまった物件の傷みや損傷である「通常損耗」や、時間が経過したことにより設備が劣化した「経年劣化」であるはずなのに、請求されてしまったというものですね。

――「納得がいかず交渉をして減額となった」という人は、51.6%のうち、わずかに10.9%です。

渋谷さん この数字から、納得がいかなかった人の大部分が泣き寝入りして支払っていることがわかります。また納得するしない以前に、何も考えずに払ってしまっている人も一定数いると推測できますね。

 

入居者が負担しなくてもいい費用とは?

まず、負担しなくてもいい費用であるにも関わらず、知らない人が多いのはどのような項目??

 

最も多かったのが「ポスター等を貼ったことによる画びょうやピンの穴」です。

そのあとに、「家具を設置したことによる床や壁のへこみや跡」「冷蔵庫設置による壁やけ」

これらはすべて、先ほども紹介した「通常損耗」にあたります。

たとえば、部屋にポスターやカレンダーを画びょうで貼ったり、家具や冷蔵庫を設置したりするのは、ほとんどの人が普通に行うもの。

つまり「通常損耗」ということになります。

 

ここで知っておいていただきたいのが、国土交通省が定める「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改定版)」(※2、以下:ガイドライン)の存在です。

ガイドラインには、原状回復義務の考え方をはじめ、賃借人の負担対象範囲やトラブル解決に関する制度や判例の動向などが掲載されています。

全169ページもあるため、すべてを把握するのはなかなか難しいですが、ぜひポイントを押さえておいてほしいです。

 

重要なポイントは?

住んでいる年数に合わせて負担すべき割合が明確に決まっているという点です。

たとえば床の傷について、入居1年でつけた人と入居10年でつけた人の負担額が一緒では公平性を欠きますよね。ガイドラインと照らし合わせて、自分は○年住んだから負担額は何%くらいである、と目安にすることができるのです。

 

たとえば、壁紙やカーペットの法定耐用年数は6年と規定されています。

その物件に6年以上住み退去するのであれば、壁紙やカーペットの残存価値は1円と評価されるため、借主の故意・過失による破損などがなければ、原状回復するための費用を支払う必要はないということになるのです。

 

原状回復とは、どのような状態?

入居したとき同じ状態に戻すという意味ではありません。

ガイドラインでは「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損(損耗等)を復旧すること」と定義しています。

 

つまり、明らかに通常使用の結果とはいえない不注意でできた傷や、清掃を怠って放置したことで発生したカビや汚れなどについては、借主が原状回復のための費用を負担する対象になりますよ、ということなのです。

 

入居者が負担しなければならない費用とは?

入居者が負担すべき費用であるにも関わらず、負担しなくていいと勘違いする人が多かった主な項目

渋谷さん もっとも勘違いしている人が多かったのが「専用庭の雑草処理」で、その後、「雨の吹き込みによる床の色落ち」「(物件構造に起因しない)結露によるカビ・シミ」「エアコンの水漏れによる床の傷み」「水回りの水垢やカビ」と続きます。

 

借りた物件に専用庭が付いていた場合、入居者が庭の管理責任を負わなければなりません。

専用庭は、住人全員で使う共用部ではなく、専有部です。つまり入居者が適切に管理すべき場所となります。

そのため退去時に雑草が生い茂っていた場合、処理費用は入居者負担となるのです。

また「雨の吹き込みによる床の色落ち」、「結露によるカビ・シミ」、「エアコンの水漏れによる床の傷み」などは、いずれも拭き取るといった処置をせず、放置したことが原因で発生しているため、通常損耗にはあたらず、入居者が原状回復費用を請求される可能性が高くなります。

この結果を見ていただければわかると思いますが、すべては適切な管理を怠ったことが原因になっているものばかりです。

たとえば、専用庭の草については定期的に刈っておく、雨の吹き込みも濡れた日に拭いておくといった具合に、その事象が起きときに手入れをしたり、大家や管理会社に通知したりして対処していれば防げたはずですから。

 

それでは、退去トラブルを防ぐために心がけたほうがいいこと、

もし思いがけず高い退去費用を請求された際にはどのような対応をすればいいか。

POINT1 退去に備えて入居時から準備をしておく

トラブルの多くは退去時の費用に納得できないことで起こることから、つい退去時の問題と思いがちです。ですが、じつは入居時から始まっている問題でもあるのです。ですから、入居時から退去に備えて準備しておくことが大切です。たとえば、不動産会社から渡される「入居時チェックリスト」にしっかり記入して返送しておく、入居時からすでにある傷や損耗などをスマホ等で撮影し、記録に残しておくなど。面倒くさがらずにしっかり対応しておきましょう。

POINT2 大家さんや管理会社との連絡を密にする

ガイドラインは国の指針ではありますが法律ではありません。そのため、大家さんや管理会社によって基準が異なっているのが現状です。

「これは大丈夫だろう」と勝手に判断せずに、何か疑問がある場合はすぐに相談することを心がけてほしいです。

たとえば、壁に釘を打っていいのか、床に傷をつけてしまったけれど修理したほうがいいのか、など。

退去時に伝えるのではなく、その都度、相談して承諾をもらうようにしましょう。

POINT3 ゼロゼロ物件には要注意

ゼロゼロ物件とよばれる「敷金0」「礼金0」の物件は、敷金・礼金の支払いがない分、初期費用が安く済むというメリットがあります。

その一方で、家賃が割高に設定されていたり、退去時にクリーニングやリフォーム費用を別途支払わなければならなかったりする可能性もあります。メリットだけでなく、デメリットがあることも覚えておいてほしいです。

POINT4 困ったら専門家に相談する

不動産会社には退去費用の内訳について説明する義務があります。

もし思いがけず高い退去費用を請求された場合は、明細書を出してもらってください。

納得できない場合は、明細書をもとに弁護士や国民生活センターなどに専門家に相談してみるのもよいでしょう。また、支払ってしまったあとでも少額訴訟などで取り戻せる可能性があるので、諦めないでください。