株式会社Y's upの不動産業ブログ

高齢者の孤独死の増加

高齢者の孤立死は増加、賃貸オーナーや管理会社は受け入れ拒否が多数。

万が一のとき賃貸借契約の解除・残置物の処理を行う等、安心入居に奔走する不動産会社の挑戦 アミックス

 

増え続ける高齢者の孤立死と、懸念する賃貸オーナーの受け入れ拒否。「万一に備えた安心入居」に奔走する不動産会社アミックスの取り組みとは

(画像提供/PIXTA)
日本において、高齢者の賃貸物件への入居が難しい現状があります。理由の一つには、特に単身の高齢者が亡くなった場合に親族などに連絡がつかず、残置物の処理や契約解除手続きが進まない、という問題があります。
東京都内の不動産管理会社、アミックスの「見守り事務委任契約」サービスについて、同社の賃貸管理部 業務企画課の金子佳太さんに話を聞きました。

不動産会社担当者が見た「高齢者賃貸入居の分かれ目」

東京で賃貸住宅の管理を行う不動産会社・アミックスは、前向きに高齢者の受け入れに取り組んでいる会社の一つ。
業務の一環として管理物件に入居する高齢者と接することの多い金子さんは「一口に高齢者といっても、健康状態やライフスタイル、生活環境などによって大きな違いがある」と言います。

例えば、実際に金子さんが出会った80代のAさんは体が不自由でヘルパーを利用しつつも、部屋も綺麗に片付いていて明るい性格。今もご存命で金子さんと会話も弾みます。
対して、同じ80代のBさんはこれまでずっと一人で一生懸命に仕事をしてきた人。体が不自由になってもプライドが高く「自分は大丈夫」の一点張りで、行政サービスにも頼ることのないまま、残念ながらアミックスの管理する物件で亡くなられたそうです。

金子さんが出会った同じ高齢の入居者でもその反応には個人差がある(画像提供/アミックス)

金子さんが出会った同じ高齢の入居者でもその反応には個人差がある(画像提供/アミックス)

Bさんのように「自分にはまだサポートは必要ない」という高齢の入居者がいる一方で、自ら「高齢になったので、生活について相談したい」と連絡をする人もいて、反応には個人差があるようです。

「普段から人と関わっていろいろな情報を持っている人は行政のサービスを受けることにも抵抗がないのですが、人との関わりが希薄な方は、社会的にも孤立して最悪の場合は孤立死(※)に至ることを目の当たりにしています」(アミックス金子さん、以下同)

(※)孤立死は孤独死同様、誰にもみとられずに一人で死ぬことを意味していますが、孤立死の方がより「家族や社会から孤立した死」というニュアンスが含まれるとする解釈もあります。当記事では、東京都の資料に準じて以後「孤立死」という言葉を使用しています。

増え続けている高齢者の孤立死

しかし、このように高齢者の受け入れに前向きな会社はまだ少数派です。いざ高齢者が賃貸住宅へ入居しようとしても、認知症の発症や孤立死、それに伴う残置物の処理などを恐れて高齢者を受け入れないオーナーや管理会社が今も多く存在します。

なぜならば、入居者が居室内で亡くなった場合、賃借権は相続され、残置物も相続の対象となるので、

オーナーや管理会社は勝手に処分できません。

撤去するには、亡くなった人の戸籍をたどって遺族を探し出し、残置物処理の同意に関する手続きが必要でした。賃貸借契約時に残置物処理に関する取り決めがなされていないと、

解決するまでに数年かかることもあります。その間オーナーは誰にも部屋を貸せなくなってしまったり、残置物処理や原状回復が済んで貸し出せたとしても、借主の心情に配慮して賃料を下げなくてはならなかったりするからです。

実際、高齢者の孤立死は今もなお一定数起こっています。
2022年版(令和4年版)高齢社会白書によると、東京都23区内における65歳以上の一人暮らしで、自宅で亡くなった人の人数は、2020年で4238人に上ります。

 

東京都23区内における65歳以上の一人暮らし高齢者の死亡数は年々増え続けている(引用元/2022年版(令和4年版)高齢社会白書)

同調査の60歳以上の人へのアンケートでは、一人暮らしをしている人の半数以上が孤立死を身近な問題として感じており、高齢の入居者自身も孤立死に対する不安を持っている人が多いといえます。

 

60歳以上の人の3割超が孤立死を身近な問題と捉えており、一人暮らしの人に限っては5割を超える(引用元/2022年版(令和4年版)高齢社会白書)

60歳以上の人の3割超が孤立死を身近な問題と捉えており、一人暮らしの人に限っては5割を超える(引用元/2022年版(令和4年版)高齢社会白書)

 

増える孤立死に必要な契約の条件やサービスとは?

 

このような課題を踏まえ、2021年6月に国土交通省と法務省から「残置物の処理等に関するモデル契約条項」が発表されました。

これにより、司法書士などの専門家や不動産会社などの法人が入居者当人と生前に契約を結ぶことで、これまで遺族が行うのが前提となっていた死後事務や整理を第三者が行えるようにしたものです。

アミックスでも日々の見守りシステムに加えて、万が一のときには「賃貸借契約の解除」と「残置物の処理」をスムーズに行えるようにした「見守り事務委任契約」をスタートしました。

ヤモリ社製の『みまもりヤモリ』という人感知センサー機器を使って日ごろの見守りを行います。

定期的な巡回や、異変があったときに駆けつけるのはオーナーの賃貸をサブリースしている会社、つまり貸主にあたるアミックスが担当。

そして、万が一、入居者が亡くなったときは死後事務の代行サービスを提供するリーガルスムーズ社が賃貸借契約の解除と残置物所有権放棄の手続きを代行し、家賃保証会社のエルズサポートにて明け渡し完了まで家賃保証されます。

入居者の負担は月々3000円程度の利用料のみです。

 

アミックスの見守り事務委任契約のスキーム。家賃保証、見守りサービスに必要な器具の提供と運用、死後事務委任契約がセットになっていて、入居者もオーナーも安心できる(画像提供/アミックス)

アミックスの見守り事務委任契約のスキーム。

家賃保証、見守りサービスに必要な器具の提供と運用、死後事務委任契約がセットになっていて、入居者もオーナーも安心できる(画像提供/アミックス)

「積極的な高齢者の受け入れは、空室を減らすための一つの有効な方策となるでしょう。

同時にオーナーさんが安心して貸すことができるよう、リスクを減らしていく仕組みの構築が不可欠でした。

『みまもりヤモリ』からの通知や定期的な巡回で、何かあっても早期の発見が可能です。

特殊清掃(遺体の発見が遅れ、遺体の腐敗などによりダメージを受けた室内を原状回復するための消臭、

汚染除去など、特別な清掃)が必要になるリスクは軽減され、賃貸契約解除手続きや残置物処理まで行うことで、オーナーの負担は少なくなります」

 

高齢者受け入れが業績に及ぼす効果と、新たに見えてきた課題

この見守り事務委任契約に関する問い合わせは月平均で30件ほど、多い月では50件以上。

さらに入居前の面談をした高齢者で、見守り事務委任契約への新規の加入を希望する人は60件(キャンセル含む)を超えました。

アミックスの見守り事務委任契約に関する問い合わせは月平均で30件件ほど、多い月では50件を超える。2024年2月は、協力会社やシステムの切り替え時期と重なり、一時的に募集を止めていたが、徐々に数を戻してきている(画像提供/アミックス)

徐々に数を戻してきている(画像提供/アミックス)

「高齢の方は、一度入居されるとライフスタイルの変化が少ないので、

長く住まわれることが多いのが特徴です。高齢者を積極的に受け入れている当社では、

受け入れが進んでいない一般的な賃貸住宅よりも解約の頻度が低いと考えられるため、これからも空室率が下がっていくことが期待できます」

アミックスの2024年3月期の実績は、管理戸数9531戸(委託管理を含む管理戸数は10,310戸)中、空室はわずか14戸、空室率約0.15%という好業績。一方で、実際に死後事務委任契約を締結した数は、

アミックスの管理物件に入居する高齢者836名(2023年7月20日時点、予備軍含む)中53件です。

金子さんは「契約数は徐々に増えている」としながらも「反響や問い合わせがあっても、そもそも物件の入居申し込みに至らないことも多く、契約締結にまで繋がっていない」と分析しています。

入居につなげていくには、高齢者にも住まい探しをする上での覚悟が必要だとも。

「残念ながら、高齢者に貸し出しOKで、家賃が安くて広い物件など、滅多にないのが現状です。

1Kやワンルームの部屋も多く、これまで広い家に住んでいた人が、

いきなり限られた広さの部屋に住むという現実とのギャップを受け入れられないケースも多いと思います。サポートシステムを整えるだけでなく、

入居者には現実との擦り合わせも促していかなければなりません」

 

「見守り事務委任契約」のようなサービスが当たり前の社会になっていくために

今後、高齢者を対象としたサービスが増えていくために考えるべきことを、金子さんは次のように話してくれました。

「賃貸管理業界においても効率化という名の下、アプリやコールセンターでの電話対応など、社員がお客さまと直接関わらない方向へと進みがちです。しかし高齢者はスマホを使いこなせない人も多く、自分自身の生活や命に関わることなので、

密なコミュニケーションを必要としています。
時代と逆行しているようですが、私たちは既に入居されている65歳以上の方を個々に訪問してサービスの内容を説明し、

安心に住んでいただけるように定期的に巡回もしています」

既存の入居者も年を重ねていずれは高齢者になる。アミックスは65歳以上の高齢者を一人ずつ訪問し、「見守り事務委任契約」について説明を行っている(画像提供/アミックス)

既存の入居者も年を重ねていずれは高齢者になる。アミックスは65歳以上の高齢者を一人ずつ訪問し、「見守り事務委任契約」について説明を行っている(画像提供/アミックス)

効率が重視される世の中でも、入居者一人ひとりと顔を見てつながっていくことも大事ではないか、と金子さんは言う(画像提供/PIXTA)

「さらに、入居者やオーナーさんへの提案で物件価値の維持、向上を図ることも大事です。

例えば既に居住中の方も年齢を重ねると2階以上が住みづらくなることも起こり得ます。そのようなとき、1階への住み替えを提案し、オーナーさんには空室になったタイミングで適切なリフォームを提案するなどすれば、物件を長く保全することが可能です」

金子さん(右)は、アミックスで高齢者受け入れ促進のため、協力会社探しからシステムづくり、加入希望者の面談や入居後の訪問、自治体とのやりとりなども行っている。左は同じチームで事務を担当する小出真央さん(画像提供/アミックス)

金子さん(右)は、アミックスで高齢者受け入れ促進のため、協力会社探しからシステムづくり、加入希望者の面談や入居後の訪問、自治体とのやりとりなども行っている。

左は同じチームで事務を担当する小出真央さん(画像提供/アミックス)

高齢者の賃貸への入居が難しい問題は、いろいろなところで話題になりつつあります。

今回紹介したケースでは多くの会社の協力を得て、さまざまなサービスを一つにまとめて提供できている点が大きな特徴ですが、このように高齢者への入居に対応している不動産会社はまだ多くはないのが現状です。

また、精神疾患や認知症の発症など、死亡事故以外の対応をどうするかも課題といえます。

「一つひとつ解決し、行政や関係団体、企業などとの連携体制もさらに整えていきたい」と話す金子さん。

時間をかけて高齢の入居者と向き合っていくには、さらなるマンパワーも必要でしょう。

高齢者が住まいを借りるとき、このようなサービスが当たり前の社会になっていくことを切に願います。

気になる浴室暖房!

どんな家でも取り付けられるの? 気になる浴室暖房

 

冬場の浴室はどうしても寒くなりがち。

暖かい部屋から移動すると、思わずブルっと身震いすることも。

人は急激な室温の変化にさらされると、体温を一定に保つために、血管を急激に収縮させ、血圧や脈拍の変動を起こす。

これは、心筋梗塞や脳血管障害などを引き起こすこともある、ヒートショックと呼ばれる状態だ。

 

 

こうした危険を防ぐには、浴室暖房乾燥機を使用し、バスルームを事前に暖めておくことが重要。

とはいえ、「うちにそんなアイテムはない……」というご家庭も少なくないはず。
そもそも、既存住宅や今まで設置したことのない中古戸建に取り付けることはできるのだろうか。

「基本的には可能です。後付けの設置なら、壁掛けタイプがおすすめ。

工事期間も大体半日から一日程度で終了します。ただし、壁穴から熱源機へつなぐ配管を外に出す必要があるため、浴室自体が屋外に接していることなどが条件になります。

そのため、在来浴室の設計によっては取り付けが難しい場合も。木質やしっくいの内装も設置には向いていません」

そう話してくれたのは、CMでもおなじみの定番商品『ミスティ』を販売する、東京ガスの吉田さん。

 

タイプによって金額は異なるが、22万8900円(税込)の商

どんな家でも取り付けられるの? 気になる浴室暖房乾燥機

品なら、設置費用を含めて約25万円前後で取り付け可能だ。

ちなみに、すでにガス温水式の浴室暖房乾燥機がついている場合は、ミストユニットを後付けすることで使用できるミストプラスという商品も。しかし、オール電化住宅などで電気式の浴室暖房乾燥機を使っている場合は利用できない。

 

どんな家でも取り付けられるの? 気になる浴室暖房乾燥機「ミストサウナ付きの浴室暖房乾燥機は、湯船につからなくても全身が温まるので、忙しい人やシャワー派の人にもぴったり。

また、水圧による負担がないため、高齢者にも最適な入浴法なんです」

ガスなので立ち上がりも早く、浴室をパワフルに暖めてくれるそう。

う~ん、これはぜひ我が家にも取り入れたい。

そのほかでは、三菱電機のV-161BKAも人気。

こちらは人感センサーが“入浴前”と“入浴中”を感知し、状況に合わせた最適な暖房に切り替えてくれる。
また、リンナイの『バスほっと(RBH-W413KP)』は、除菌イオンが浴室のカビ菌やニオイを分解除去。バスルームをいつでも清潔に保つことができる。

自宅のお風呂ライフを充実させてくれる、浴室暖房乾燥機。リフレッシュ&リラックスタイムを満喫して、日々の活力を養おう。

空き家改善

空き家所有者「3年以上放置」が6割以上!

対策がより厳しくなった「改正空家特措法」が成立し、放置空き家改善の兆し生まれるか?

 

空き家所有者「3年以上放置」が6割以上!「改正空家特措法」成立で、改善の兆し生まれるか?

(画像/PIXTA)
空き家が社会的な問題になって久しいが、(株)AS IT ISが、空き家所有者などを対象に「空き家の実態と活用方法」について調査を行った。
その結果を見ると、空き家の所有者はかなり長期間、空き家のままにしていることが分かった。
政府も法改正などで、空き家対策を強化している。

空き家所有者の6割以上が空き家になって3年以上経過。8割が「今後も暮らす予定はない」

まず、空き家の所有者に「家が空き家となってどれくらい経つか」聞いたところ、最多は「10年以上」の22.2%、次いで「3年~5年」の21.9%、「1年~3年」の20.5%が続く結果となった。

空き家になってから「3年以上経つ」という回答が合わせて63.2%に達した。

次に、「今後、空き家に自身もしくは親族が暮らす予定はあるか」と聞くと、80.9%が「ない」と回答した。

では、空き家は今後どうするつもりかというと、「土地と家を売却する」が38.0%と最多だったが、次いで「特にない」が29.5%だった。

空き家になってどれくらい経ちますか?

出典:AS IT IS【空き家の実態と活用方法調査】より転載

 

空き家対策のための法律を改正してさらなる強化へ

調査結果では、空き家の多くが誰も住むことがないまま、長期間経過していることになる。

これらの空き家の中には、適切に管理されているものもあるだろうが、管理が行き届かずに建物が老朽化したり庭の草木が生い茂ったりしているものもあるかもしれない。

適切な管理をしないで空き家が放置されると、景観を乱したり、衛生面や防災面、防犯面などの問題を起こしたりする場合がある。

一方で、空き家といえども個人の所有物なので、勝手に入ったり処分したりできないので、問題がある空き家に手をこまねく形となる。

その解決策として、2015年5月に全面施行されたのが、「空家等対策の推進に関する特別措置法(空き家対策特措法)」だ。

この法律によって、自治体が空き家に立ち入って実態を調べたり、空き家の所有者に適切な管理をするよう指導したり、空き家の跡地の活用を促進できるようになった。

さらに、地域で問題となる空き家を自治体が「特定空家」に指定して、立木伐採や住宅の除却などの助言・指導・勧告・命令をしたり、行政代執行(強制執行)もできるようになった。

この空き家対策特措法は、さらに踏み込んだ形で改正され、「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」が2023年6月14日に国会で成立し、公布された。

問題のある空き家の除却をさらに促進させること、近隣に悪影響を及ぼす前の段階で有効活用や適切な管理を強化することが目的だ。

 

適切に管理しないまま放置すると、固定資産税の軽減措置が受けられなくなる?

今回の改正で注目されているのが、「特定空家」の前段階となる「管理不全空家」という区分を設けたことだ。

今回の改正により、適切な管理が行われておらず、そのまま放置すれば「特定空家」に該当するおそれのある空き家を「管理不全空家」として、管理指針に即した措置を、自治体が指導・勧告できるようになる。勧告を受けた管理不全空家は、固定資産税の減額措置が解除される。

そもそも誰も住んでいない空き家を放置する背景に、「住宅用地の課税標準の軽減特例」の存在がある。

住宅用地と認められた土地で、住宅1戸当たり200平米までの土地は「小規模宅地」として、課税標準=固定資産税評価額が1/6に軽減される。

固定資産税の額を抑えたいために、住める状態でなくても家を取り壊さないでおくという事例が多いからだ。

空き家対策特措法では、すでに「特定空家」に対してはこの軽減特例を解除する形になっているが、今回の改正で「管理不全空家」に対しても同様に軽減特例を解除する形となる。

解除されると、固定資産税がおおむね4倍になるといわれている。

なお、空き家対策特措法の改正は、公布から6カ月以内に施行されることになっている。早ければ年内にも施行される可能性があるので、空き家を管理せずに放置している場合は、注意が必要だ。

空き家を放置すると、近隣とトラブルになったり、法規制の対象になったりする可能性がある。

住む予定がないなら、老朽化が進行する前に売却したり、更地にしたりリフォームしたりして、活用することを検討しよう。

相談窓口を設けたり専門家を紹介したりする自治体も多いので、早めに相談するとよいだろう。

SUUMOジャーナルから引用

家庭ごみの有料化

広がる「家庭ごみ処理有料化」、メリット・デメリットは?

日常生活を過ごす上で、全くごみを出さない日はほぼないと言ってよいでしょう。私たちは普段から何かしらのごみを排出しており、令和元年度の1人1日当たりのごみ排出量は918グラムでした。
 
家庭ごみは基本的に、自治体のごみ回収のサービスを利用して処分してもらう形になります。ごみの分別や捨て方は、自治体によって異なっており、ごみの種類によっては回収にかかる費用が有料である場合もあります。
回収が有料といえば、家具などの大型の粗大ごみが思い浮かぶと思います。
 
ただ、現在、家庭ごみの収集を有料化する動きが全国の自治体で広がっています。今回はこの「家庭ごみ処理有料化」について見ていきます。
家庭ごみ処理有料化とは?

家庭ごみ処理有料化とは、市町村など自治体が一般廃棄物(=家庭ごみ)の処理についての手数料を徴収することを指します。
多くの自治体では、自治体が指定した有料ごみ袋をつかって家庭ごみ処理有料化を行っています。
ごみを出す量に応じてごみ処理費用を一部負担する仕組みです。
なお、手数料を上乗せせず、販売される一定の規格を有するごみ袋(指定袋)の使用を排出者に依頼する場合については「有料化」に該当しません。
 
家庭ごみの処理有料化の背景には、廃棄物処理法の基本方針の改正があります。
この改正により、市町村の役割として「経済的インセンティブを活用した一般廃棄物の排出抑制や再生利用の推進、
排出量に応じた負担の公平化及び住民の意識改革を進めるため、
一般廃棄物処理の有料化の推進を図るべきである。」と追加され、国全体の施策の方針として、
一般廃棄物処理の有料化が明確化されました。このように法律で明確化されたことにより、近年有料化を行う自治体が増えているのです。
 
家庭ごみ処理の有料化を推進する目的は、環境省の資料によれば下記の4点が記載されています。
有料化の目的
(1)排出抑制や再生利用の推進
一般廃棄物処理を有料化することにより、費用負担を軽減しようとするインセンティブ(動機付け)が生まれ、一般廃棄物の排出量の抑制が期待できる。
 
(2)公平性の確保
排出量に応じて手数料を徴収する有料化を導入することで、費用負担の公平性が確保できる。
 
(3)住民や事業者の意識改革
有料化の導入によって、廃棄物排出に係る意識改革につながることが期待される。その結果、廃棄物の発生が少ない商品の選択や不用・不急の商品購入の抑制、製品の再使用の促進が期待される。
 
(4)その他の効果
環境負荷及び収集運搬費用や処理費用の低減、また、手数料収入を分別収集及びリサイクルの実施に係る費用や集団回収への助成など、循環型社会の構築に向けた一般廃棄物に係る施策の充実が期待できる。
 
つまり住民が費用負担を軽減しようとすることにより、ごみ問題意識を高めることにつなげたり、ごみの排出者としての責任をより明確にするためです。そして、ごみの排出を抑制したり、ごみの再生利用を促進し、循環型社会に貢献することができると期待されているのです。
家庭ごみ処理有料化のメリット・デメリット

それでは、家庭ごみの処理有料化によるメリットとデメリットはそれぞれどんなものがあげられるのでしょうか?
 
家庭ごみ処理有料化のメリット
・家庭ごみ排出量の削減
・資源物の分別排出によるリサイクルの推進
・3R(ごみの発生抑制、再使用、再利用)の推進に向けたごみへの意識向上
・焼却場・最終処分場の延命化
・ 事業者における環境負荷を考慮した販売方法や製品開発の推進

 

有料化を行うことで家庭ごみを削減でき、焼却場や処分場、清掃工場の負担を減らし延命化、自治体の財政負担の経験などにつながるといったメリットが挙げられます。
 
家庭ごみ処理有料化のデメリット
・家計の金銭的負担の増加
・コンビニエンスストアなどへの不法投棄・不適正排出の増加
・指定袋販売店における事務負担の増加
・ 旧指定袋からの移行時における在庫管理

 

一方有料化に伴う一番の懸念材料は、市民の金銭的負担が増えることにより、不法投棄や不適正排出の増加に関する問題です。監視カメラの設置や夜間の監視パトロールなど事前に対策をとることにより、不法投棄や不適正排出の顕著な増加は見られなかった自治体もあります。
家庭ごみの有料化、実施している自治体は?

それでは、家庭ごみ処理有料化を実施している自治体はどれほどなのでしょうか?
全国の自治体を対象とした家庭ごみ処理有料化に関する調査結果を、公共イノベーション事業グループが発表しています。
調査期間は2020年1月8日~2月5日、2021年1月に3,000世帯以上を有する全国1,367自治体を調査対象としています。
 
粗大ごみを除く家庭ごみの有料化を実施している割合は58.0%で、2008年の第1回調査(39%)と比べ19%増加しました。
2016年の前回調査(55.4%)からは2.6%の増加がみられており、家庭ごみの有料化を導入する自治体が年々増えていることが見て取れます。
 
地方区分ごとに有料化の実施率を見てみると、北海道地方が89.4%と最も高く、以下、九州・沖縄地方(79.2%)、中国地方(74.4%)、四国地方(68.8%)と続きます。最も低かった東北地方は38.7%にとどまり、地域差があることがわかりました。
 
それでは、有料化を実施している自治体の例を見ていきましょう。
北海道登別市
●導入…平成12年4月1日
●分別区分…燃やせるごみ・燃やせないごみ:市指定有料袋、粗大ごみ:有料(個別収集)、資源ごみ:無料
●有料化制度の評価
 ・ごみの有料化に伴い、全体で36%のごみが削減されました。
 ・ごみの有料化が図られることにより、発生・排出の抑制が図られ、また、資源ごみ(びん・缶、ペットボトル)の回収を無料とすることで、資源ごみの適正分別が容易となりました。
 
東京都調布市
●導入…平成16年4月 
●分別区分…可燃ごみ・不燃ごみ:市指定有料袋、粗大ごみ:ごみ処理券貼付、有害(危険)ごみ・資源物:無料
●有料化制度の評価
・廃棄物排出量の減少、不適正排出の減少、不法投棄の減少、ごみ問題や美化等に関する住民意識の向上が見られました。
・戸別収集も行うことで、7年後にはでごみの排出量が約20%減少。
 
京都府京都市
●導入…平成18年10月
●分別区分…燃やすごみ:市指定有料袋、資源ごみ(缶・びん・ペットボトル・プラスチック類):市指定有料袋、大型ごみ:粗大ごみ処理券貼付、その他資源ごみ:無料
●有料化制度の評価
・平成15年策定の一般廃棄物処理計画(京都市循環型社会推進基本計画)の減量目標を達成。
・有料化実施にあたっての定期収集ごみ(燃やすごみ)の削減目標は達成、燃やすごみは平成19年度時点で23万トンを切っており、有料化実施にあたっても目標も達成しています。
 
 
熊本県熊本市
●導入…平成21年10月
●分別区分…燃やすごみ:市指定有料袋、プラスチック製容器包装:無料、紙:無料、埋立ごみ:市指定有料袋、資源物:無料、ペットボトル:無料、大型ごみ:有料大型ごみ処理券貼付、資源物拠点回収:無料
●有料化制度の評価
 ・平成22年度においては、平成14年度比22.2%削減となり目標を達成、平成23年度においては、平成21年度比11.7%削減となりました。
 
「記名式ごみ袋」とは?

「記名式ごみ袋」とは、家庭から排出されるごみ袋に氏名を記入することで、複数の自治体で採用されています。
 
「記名式ごみ袋」の目的は、排出者を特定しやすくすることで、分別等ごみの排出に関する意識向上を図ることです。
6年連続でごみ排出量が少ない都道府県1位長野県では、ごみ袋に記名を求める自治体が多く、77市町村中で9割近い69市町村が「記名式ごみ袋」を採用。長野県が公表しているデータによれば、何も施策を行っていない市町村に比べ、「ごみ処理有料化」や「記名式ごみ袋」を行っている市町村のごみ排出量がは少ないことが明らかになっています。
 
記名式ごみ袋は、ごみの分別が不十分であった場合に排出者を特定しやすいといった点がメリットとして挙げられますが、一方で以下のような問題点もあります。
 
・プライバシーの侵害
・個人情報流失の懸念
実際に記名式ごみ袋を導入している自治体の住民からも、不安や疑問の声が上がっているようです。
 
見られたくないものをごみとして出す場合は、
・別の袋に入れて二重にする
・外から見えないよう細かくしたり、袋の中央に入れる
・不透明なもので包む
・クリーンセンターに直接持ち込む
など個人で対策が必要となっています。
 
 
 
 
家庭ごみ処理有料化は、ごみ排出量の削減やリサイクルの推進など、大きな効果が得られることがわかりました。
しかし一方で、市民の金銭的負担や不法投棄・不適正排出などのデメリットも挙げられ、費用負担の公平性の確保等、自治体には様々な対策を講じることが求められます。
 
私たちは日々ごみを排出しており、ごみ問題は、国や自治体だけではなく私たち一人ひとりも意識していかなければならない大きな課題です。
ごみの有料化および記名式ごみ袋と言った施策により、ごみ排出量は減少していますが、
今後もごみ削減に向けた取り組みをしていかなければなりません。
ごみの排出量を減らすためのアイデアを講じたり、適正な分別、3Rの実施を行うことは、個人や企業のごみ処理コストを削減することになるので、節約にもなります。
 

まとめ

家庭ごみ処理有料化は、ゴミ排出量の削減やリサイクルの推進など大きな効果が得られるとのデータがありました。
市民の金銭的負担などデメリットがあるため、費用負担の公平性を確保することが自治体には求められます。

 
マンスリーマンション賃貸

マンスリー賃貸は普通の賃貸とどう違う?

 

 

マンスリー賃貸とは?

マンスリー賃貸は、月ぎめ賃貸マンションとも呼ばれています。マンスリーとは、月単位という意味で、1か月~1年以内の

短期契約で入居者が居住することを前提とされている物件です。

 

マンスリー賃貸の概要

一般の賃貸住宅は1年単位など長期の居住契約を結ぶ仕組みで、初回の居住契約をする際に、敷金、礼金、仲介手数料といった

初期費用と保証人または保証会社への加入が必要となります。

 

一方でマンスリー賃貸の場合は、一般的に初期費用は不要です。保証人は物件によって必要な場合があるため、契約する際には

必ず確認しましょう。

マンスリー賃貸は、家具だけでなく水道光熱費も月々に家賃に含まれている場合が一般的です。

鍵さえ受け取ればすぐに暮らすことができる点が大きな特徴です。

なお、同様の仕組みを持つ賃貸物件で月単位ではなく週単位での居住契約をする契約の仕方もあります。

こちらは、さらに短期での居住者向けです。何日か続けて滞在する場合ホテルは宿泊機能に特化されるので日常生活には

適しません。

 

また一般賃貸では入居時に複雑な手続きと高額な手数料が必要になり、短期居住には不向きです。

これらの差を埋める位置づけにある中間的な存在が、マンスリー賃貸であると考えられます。

 

メリット

マンスリー賃貸のメリットは数多くありますが、まず生活に必要な家具や家電が備え付けられているため、大がかりな引っ越しが必要ありません。

入居時に支払う初期費用も一般賃貸よりかなり安く済みます。

一般賃貸の入居契約には目安として「家賃の5ヵ月分」ほど必要だといわれますが、マンスリー賃貸の入居契約には清掃費用と家賃+光熱費+管理費、鍵交換費用(物件による)だけで済みます。

インターネット回線が完備されている物件も多く、一定の期間を要する回線の移転手続きも不要です。

また、一般賃貸より入居審査が厳しくない点もメリットに挙げられます。

身分証明書で本人確認が取れればすぐに入居を認めてもらえるケースが多く、できるだけすぐに住み始めたい方には助かるでしょう。

電気やガス、水道なども自分で手続きすることなく、入居後すぐに使い始められます。

 

デメリット

マンスリー賃貸のデメリットは、事前に内見できない点です。

気になる方は室内の様子をWebで見たり、スタッフに部屋の状況を詳しく問い合わせたりするなど確認が必要でしょう。

また、マンスリー賃貸に入居する方の生活スタイルは、一般賃貸よりも多様になりがちです。

長期出張中の方や単身赴任中の方、観光滞在の方や外国から来た方などが多く暮らす傾向があり、入居者間の生活時間も合わないことが多くなります。

人によっては、快適に過ごせる環境ではない可能性も考慮しましょう。

 

ファミリー向けのマンスリー賃貸

子育て世帯がマンスリー賃貸への短期入居を考えるケースでは、その背景に特別な目的や事情があることも多いと思います。

ここでは子育て世帯がマンスリー賃貸で暮らす際のメリット・デメリットを見ていきましょう。

 

メリット

家の購入を検討しているときや、新居へ引っ越す前に短い間だけ暮らしてみて周辺環境を調査する目的に最適です。

引っ越す前に街に慣れておきたい、または希望の物件をじっくり探したいと考えているなら、マンスリー賃貸はお試し居住にぴったりの物件といえるでしょう。

また一戸建て住宅の新築時や、家の建て替え・リフォームをする際の建築期間中の仮住まいにも向いています。

 

デメリット

マンスリー賃貸に子育て世帯が暮らすデメリットは、一般賃貸よりも家賃相場が高めに設定されている点です。

理由としては、家具や家電、電気・ガス・水道・インターネットなどのインフラがすでに備わっていることや、短期入居者しかいない点が考えられます。

家具・家電がすでに用意されているため、自分好みのインテリアへ変更することができない点は、人によってはデメリットになります。

また、マンスリー賃貸の多くの物件では、身分証明さえできればどなたでも入居することができます。

そのため同じ建物内にどのような人が住んでいるか把握しにくく、小さな子どものいる世帯が入居する際は心配事が多くなるかもしれません。

またマンスリー賃貸に1年以上住み続けるというケースはあまりないこともあり、多くの物件で住民票を移動することが不可とされています。

 

まとめ

子育て世帯にとって、住み替え時のお試し入居や仮住まいなどに利用できる賃貸物件探しは悩みの種になりがちです。

「今すぐ住み始め、短い間だけ暮らしてすぐ退去したい」というニーズに、一般の賃貸物件はあまり向いていません。

マンスリー賃貸の存在を知っておくと役に立ちます。

マンスリー賃貸のメリットやデメリットをあらかじめ把握しておき、必要なときにすぐ手配できると家族にも負担がかかりませんよね。

建て替えや周辺環境を確認したいと考えている方は、ぜひマンスリーを検討してみてください。

 

 

 

 

おとり物件の見分け方

良さそうな部屋を見つけたので不動産会社に連絡。店舗を訪れて内見を希望すると

「既に入居が決まってしまいました」との返事が……。「せっかく不動産屋さんに行ったのに物件を見られなくて残念だった」、

「その部屋に住む想像をしていたのにがっかりした」と思いますよね。

「本当にその物件はあったのかな?だまされた気分…」「もしかしておとり物件だったの?」と思う人もいるかもしれません。

では、どのようにすれば、「おとり物件」を見分けられるのでしょうか。

 

サイトに掲載されているけど、入居できない「おとり物件」

「おとり物件」とは、不動産ポータルサイト(SUUMOなど)に掲載されているのに、

「現実に存在しない物件」「建物はあるけれども実際には入居できない物件」のことをいいます。SIRE代表取締役の木津さんは「おとり広告やおとり物件は大きくわけて、意図して掲載されているものと、ミスや仕組みによってどうしても生まれてしまうものがある」と解説します。

そもそも、「おとり物件」が生まれる背景には

  • 悪意を持って掲載するもの
  • ミスによってできてしまうもの
  • 仕組みとしてどうしても発生してしまうもの、の3つがあります。

昨今では、架空の物件を掲載するなどの悪意をもったおとり物件は、倫理的な観点やポータルサイトや不動産公正取引協議会の規定等が厳しくなったこともあり、あからさまに行う不動産会社は少なくなりました。

一方で、不動産会社は、契約申し込みが入ったことを知っていてもすぐに取り下げたりせず、来店時に入居が決まったと伝えるということは、現実にはまだあるようです

不動産会社に行くと、「その部屋は決まってしまいました」と言われてしまい「もう決まってしまったの?」「もしかしておとり物件だった?」と不安になる女性のイラスト
契約申し込みが入ったことを知っていてもすぐに連絡せず、来店時に入居が決まったと伝える不動産会社も稀ですが存在します

なぜ「おとり物件」ができる?意図せずにできてしまう理由と背景

 

一方で、意図しないミスやリアルタイムに情報が共有されない不動産業界の構造上、できてしまう「おとり物件」があります。

それを理解するためには、まず不動産会社の種類を知る必要があります。不動産会社には、大きく分けて「元付会社(オーナーから直接物件を預かっている)」と「客付会社(他社から物件情報を収集している)」の2種類があります。

◆オーナーから物件の募集を直接預かっている会社(元付け会社)…不動産の所有者(大家さん)から物件の管理、入居者の募集を直接任されています。そのため、入居希望の申し込みがあったり、契約となれば担当者がポータルサイトから削除できます。

◆他社から物件情報を収集している会社(客付け会社)…元付け会社から情報を取得して掲載している会社。オーナーや元付け会社は、入居希望があっても客付会社にわざわざ「申し込みが入りました」という連絡はせず、客付け会社が確認してはじめて契約状況が判明するため、物件情報を更新・削除するまでにタイムラグが発生します。

 

ミスによってできてしまうおとり物件

上記の不動産会社の種類を把握したうえで、2つのパターンをご紹介します。
まず1つ目は成約済みの物件を削除し忘れたケースです。「自社で管理していてすでに成約済みとなった物件を削除し忘れた」「リアルタイムの成約状況を把握せずにインターネット広告を掲載してしまった」というミスにより、おとり物件になってしまうのです。

各社システムも異なり、更新頻度も異なるため、自社システムで削除していても、数日はポータルサイトに反映されず、そのまま掲載されていることもあるのです。

 

仕組みとしてどうしても発生してしまうもの

2つ目は業界の構造上の理由でどうしても発生してしまうケースです。

各ポータルサイトや不動産公正取引協議会の規定では、この掲載物件の情報更新頻度は1週間と定められていることから、最大1週間は気づかずに掲載を続けてしまうことになります。そのため、実際には入居申し込みがあったとしても情報が共有されず、あらためて物件確認をしたらすでに決まっていた、ということが発生してしまうのです。
※掲載している物件の募集がまだ行われているかどうかを、客付会社から元付会社にすることを、「物件確認」といいます

「特に1月から3月の繁忙期は、数分前まで募集していた物件にタッチの差で入居申し込みが入ってしまうことがよくあります。そのため店頭で『この物件、決まってしまったんですよ』といわれたとしても、借り手の立場では、悪意によるものなのか、ミスなのか、構造上のものなのか、見分けたり、見極めたりするのは非常に難しいといえます

おとり物件に振り回されない、4つの見極め方と知っておきたい対処法

では、おとり物件にまどわされずに、理想の部屋と出合うにはどうしたらいいのでしょうか。お部屋を探している人ができる4つの見極め方と、1つの対処法をご紹介します。

(1)電話やメールの問い合わせ時点で、物件の募集が終了した場合、知らせてほしいと念を押す

不動産会社にメールや電話で問い合わせをしたときに、「物件の募集が終了したら知らせてほしい」とあらかじめ念押ししておきます。募集が終了していれば来店しない、見学しないという気持ちをしっかりと伝えて、「この物件が気に入っているから見学したいんだ!」という姿勢を見せておくのです。

また、内見の約束をしている当日の朝に、問い合わせた物件がまだ募集しているかどうか確認する手も有効です。

この方法であれば希望物件をその日にきちんと見学することができます。

(2)物件に現地集合して、内見の約束をする

不動産会社の店頭に来店後にお部屋の内見をするのではなく、物件の現地で集合し、内見の待ち合わせをしておけば、「すでに決まってしまった」という状況にならずにすみます。

ただし現地集合で道に迷ってしまう可能性もありますし、周辺環境などのガイドを受けることはできません。

また、店頭で他のおすすめ物件の提案を受けられる機会を失ってしまうので、注意も必要です。

不動産会社と現地集合で内見する方法を表したイラスト
不動産会社の担当者とは物件前で集合し、内見する方法もあります

(3)複数の会社に問い合せする

同じ部屋を複数の会社が取り扱っている場合、1社に問い合わせてみて、不安になるようなやりとりであれば、別の不動産会社に問い合わせしてみてもよいかもしれません。

ただし、複数人のスタッフの時間をとることになるため、モラルとしてはあまり良い手段ではありません。

 

(4)信頼できる仲介会社を選ぶ

問い合せのたびに会社を変えるのではなく、案内してくれる会社を絞り、担当者と信頼関係を築く方法もあります。時期を区切らずよい部屋に出合いたい人や、ていねいに、満足いくお部屋探しをしたい人におすすめです。

ただし、期間や時間が必要になるため、「○月末までに引越し」などの期限が決まっている人は使えません。

早めの行動と、情報収集、決断スピードが家探しのカギ

好条件の部屋や希少価値の高い物件は、インターネットに掲載されるとすぐに入居申し込みが入ります。

特に部屋探しをする人が増える1月~3月は希望者が集中するため、一段と競争が激しくなります。まずは不動産ポータルサイトなどでしっかりと情報収集と検討、リサーチを行い、自分の希望条件をクリアにしておきましょう。

また、物件見学をするときは「その物件があいていれば絶対に契約する」と気合いを伝えておくと、不動産会社の担当者も親身になってくれます。

特に繁忙期は即決する人が多いので、早め早めに行動するとともに、不動産会社を味方につけるとよいでしょう。

【まとめ】
客を来店させるおとり物件。
内見前に確認することで、防ぐことはできる。サイトに掲載されているけど、入居できない「おとり物件」。悪質なものは減っている

申込状況がリアルタイムに情報共有されない不動産業界の構造上、生まれてしまうことがある

内見前に「募集が終了したら教えてください」と伝えることで、無駄足を踏まなくて済む

物件見学後はすぐに申し込みをするなど、スピード感をもって決断することが大切

賃貸のエアコン交換

入居者とのトラブルでお悩みの大家さん必見!

築古物件の古い設備の交換を希望されたら?

物件の築年数が古くなると、設備の古さも目立ちます。壊されているわけではなくまだ、十分に使用できるものであっても

最新設備との性能の違いは一目瞭然です。

 

今使用している設備が明らかに故障しているとわかる場合には、交換もやむ負えないでしょう。問題となるのは、

故障はしていないけれど設備が古いのが気になるので、新しいものに交換してほしいという入居者からの要望です。

こんな時、大家さんはどこまで入居者の意見を聞き、受け入れるべきなのでしょうか?

 

 

基本的に大家さんは交換する義務はない

結論としては、古いからというだけで、大家さんが設備を交換する必要はありません。その理由と、交換を検討すべき状況に

ついて以下で説明していきます。

 

故障していない場合は義務ではない

賃貸物件は、築年数や設備などのグレードに応じて賃貸を設定しており、入居者もそれを

承知しているうえで賃貸契約を結んでいます。そのため、グレードを上げるための設備交換をお断りする事には何の問題もありません。

ただし、設備の交換を断ることで入居者との間にわだかまりができ、退去につながることもります。

よほど立地が良く入居希望の多い物件では問題ありませんが、そうでない物件であれば設備を一新して入居者の満足度を高めるのも一案でしょう。

特に、長期にわたって居住している入居者の意向には慎重な対応が求められます。

 

また、大家さん側での交換はできないけれど入居者がどうしてもいうときは場合には、入居者負担で交換してもらうという方法もあります。

 

・古設備を交換するなら故障する前に!!

2020年4月、民法改正により第611条賃借物の一部滅失等による資料の減額等の内容が賃料減額請求制度に変更されました。

 

賃借物の一部が故障により使用できなくなった場合、入居者に過失がなければその分の家賃を減額できるというものです。

日本賃貸住宅管理協会が作成したガイドラインでは、ガス給湯気の故障によりガスが使えない場合、4日目から日割りで10%家賃が減額されます。エアコンが作動しない場合は4日目以降、1か月あたり5000円の家賃減額となります。

設備に関して不調の訴えがあった場合には、早めに現地を確認し、故障によって家賃が減額になる前に、修理・交換をするようにしてください。

 

設備工事の費用相場はどれくらい??

例えば、エアコンの設備費用は、14畳までの広さであれば1万円前後が目安となります。ただし、2階以上の階でベランダがない

物件の場合には別途室外機の壁掛け工事が必要です。足場の有無によって、かかる費用は異なります。

配管の化粧カバーは、必須ではありませんが野外の場合はカバーをすることで配管の劣化防止にも繋がります。

長さ2~3メートルで5000円程度です。

このほか、電圧を切り替えたり、ブレーカーを交換したりする必要がある場合には電気工事が必要です。

費用としては数千円から1万円程度です。ベランダがあれば、エアコン本体、標準取付工事2万円程度で設置できると考えていでしょう。

 

まとめ

築数年がたち建物が古くなると、入居者から壊れていない設備の交換を求められることも出てくるでしょう。

そんな時、入居者の要望に応えるべきなのか、どのように立ち回るべきなのか、大家さんとしてこの記事を参考にご一考

いただければと思います。

基本的には、その時のタイミングや状況、費用対効果に応じて判断することになりますが、入居者負担で設備を交換する際は

残置物が後々トラブルの元になることも少なくありません。退去時取り扱いについて、費用負担なども含めきちんとルールを定めて

置くことが大切です。

 

 

 

床段付き賃貸!

家族で暮らすなら床暖房付きの賃貸で!床暖房がある賃貸物件のメリット・デメリット

床暖房

室内の湿度の変化をおさえ、部屋を足元から暖めてくれる床暖房。

乾燥が抑えられ、お手入れも簡単!更に騒音対策としても有効だってご存じでしたか?

子育て世代のみならず高齢者や身体の不自由な方と同居されている場合には、ぜひ床暖房を検討してみてください。この記事では、床暖房のメリット・デメリットに加え、種類や効果的な使い方をご紹介します。

床暖房とひとくちに言っても「どんな種類があるかわからない」「電気代が高いんじゃないの?」と疑問の方にぜひ読んでいただきたいです。

床暖房の種類

まず、床暖房は大きく分けて「電気式」と「温水(ガス)式」の2種類があります。それぞれどんな特徴をまとめました。

 

電気式

電気式は、床下に張り巡らせた電熱線のヒーターに電気を通し、床を温めます。ヒーターはフローリング材の下に張られており、その下には断熱材や下地が敷かれています。その一方で、温水(ガス)式と比べて温まるまでに時間がかかるといったデメリットがあります。ひと月あたり約2,800円〜6,100円の電気代がかかります。

温水式と比較すると月々の費用がやや高い傾向です。日本では最も馴染みのあるタイプで、場所による温度ムラができにくいメリットがあります。頻繁に電気のON.OFFがある場合は、電気式がいいでしょう。電気代が心配という方は、深夜に蓄熱しておくタイプがおすすめです。

 

温水(ガス)式

温水(ガス)式は電力でお湯を沸かす「温水式電気床暖房」、ガスでお湯を沸かす「温水式ガス床暖房」の2種類があります。電気式よりも新しいタイプで、温まるまでの時間が早く、維持費が安いのが特徴です。

 

床暖房のメリット

では、実際に床暖房付きの賃貸を借りた場合はどのようなメリットがあるのでしょうか。以下で見ていきましょう。

 

床から部屋全体を暖めてくれる

床暖房は床で暖められた空気が上昇するため、部屋全体を暖めてくれます。エアコンで頭がぼーっとするのは、上に空気がたまったままになるためです。

床暖房は下からの暖まるので頭がぼーっとしにくいメリットがあります。読書や勉強などにぴったりなので子どもの勉強部屋に取り入れたいですね。

 

冬場でも乾燥しにくい

冬場にエアコンをつけていると肌や空気の乾燥が気になります。寝起きの喉がガラガラだったり風邪をひきやすかったりしますよね。

床暖房はエアコンのように大きな気流をつくりません。そのため、エアコンよりも空気を乾燥させにくく、肌からも水分をあまり奪わないのです。

風が直接体に当たることもないので、だるさを感じにくいのもメリットです。乾燥肌や冬場に喉が枯れやすい方におすすめなのはもちろん、加湿器の出番も減るのでその分コストも浮くでしょう。

床暖房のデメリット

メリットの多い床暖房ですが、一部デメリットもあります。どのようなものがあるのか、以下で見ていきましょう。

 

光熱費がかかりやすい

エアコンなど他の暖房器具に比べて、床暖房は光熱費がかかりやすい傾向にあります。特に電気式の床暖房は温水(ガス)式の床暖房に比べてランニングコスト(維持費)が高いです。、オール電化やエコキュートを取り入れている賃貸であれば電気代が抑えられるでしょう。

その点、温水(ガス)式の床暖房は循環水を使って床を暖めるため水道代もあまり変わらず、安い料金プランに入ることで光熱費を下げられます。

思ったより光熱費がかからないこともあるので、候補のお部屋が決まったら事前にいくらかかりそうか確認してみましょう。

 

低温やけどに注意

低温やけどは、44~50℃程度の温度に長時間触れることで起こるやけどです。床暖房はちょうどこの温度に近くなりやすく、うっかり寝落ちてしまったりすると低温やけどをしてしまうことがあるので注意が必要です。

暖かいからと乳児をそのまま床暖房の上に寝かせていたり、ハイハイ中の子どもをずっと放っておいたりすると、知らないうちに低温やけどをしてしまうことも。対策としては、40℃前後で温度を安定させられる温水(ガス)式の床暖房を選ぶとよいでしょう。

 

床暖房の効果的な使い方

実際に床暖房を使うとき、より効果的にお部屋が温まる方法がいくつかあります。以下でその方法を見ていきましょう。

 

家具の置き方を工夫する

  • 床暖房を効率的に使うためには、カーペットを敷かないようにする
  • テーブルや椅子を脚のあるタイプにする

このように家具の置き方を工夫することが大切です。カーペットや脚のない家具(床面を隠す家具)は、床からの輻射熱や熱伝導をさえぎるため床暖房の効果を減らしてしまいます。

効果を最大限発揮させるためには、カーペットは敷かず、床をあまり隠さない脚付きの家具を置くようにすると効率的にお部屋を暖められます。

 

他の暖房器具との併用方法

床暖房はスイッチを入れてから部屋が温まるまでに時間がかかりがちです。とはいえ、設定温度を上げると光熱費がかさみ、低温やけどもしやすくなってしまいます。

そこで、最初はエアコンやファンヒーターも併用して部屋を暖めるのがおすすめです。床暖房は一度温度が安定すると省エネ運転に切り替わることが多く、最初に他の暖房器具も使って一気に部屋の温度を上げてしまう方が、光熱費も節約できます。

特に石油やガスを使ったファンヒーターはすぐ熱風を送ってくれるうえ、エアコンと違って下から暖めるので、床暖房との相性も抜群です。

 

まとめ

この記事では、床暖房の種類やメリット・デメリットに加え、効果的な使い方についてもご紹介しました。「憧れの暖房器具」というイメージも強い床暖房ですが、種類や使い方を選べば、思ったより安いコストで使えることも。

引っ越したい地域やご家族のライフスタイルを踏まえると、床暖房付きの賃貸に住む方が良い場合もあるでしょう。家族で暮らす賃貸物件をお探しの際は、ぜひ床暖房付きのお部屋も探してみてはいかがでしょうか。

大家さん必見!よくあるトラブル対策

賃貸管理でよく起こるトラブル事例と対処法を解説!!

 

騒音やペット無断飼育など、近年増加傾向にあるトラブルが発生した場合、どのように対処すればいいのでしょうか?

賃貸管理で起こりうるトラブル事例の対処法!

 

・ペットがNGな物件で入居者がペットを飼っていた場合明け渡しを求められるのか?

 

 

契約書の禁止条項に該当しても、必ず解除可能とは限らない!

賃貸契約を解除するためには、単に契約違反というだけでなく信頼関係の破壊という要件を満たす必要があります。

しかし、ペットが家族の一員という認識も社会に広がりつつある現在、ペットの無断飼育が信頼関係の破壊に該当するとは言い切れません。

裁判では、ペットの種類、頭数、飼育の実態、契約違反の悪質性、物件や近隣へ具体的にどのような損害が発生しているか等の

具体的な事情を考慮して、契約の解除が相当な事案かどうか判断されます。

 

・上階住人の足音が響いてうるさいから強く注意してほしい

事実確認、発信源の特定、対応方法の検討は慎重に!!

入居者が受忍限度を超える騒音を発している場合、直ちに騒音を止めるよう求め、程度によっては契約解除、建物明渡請求を検討する事があります。

しかし騒音トラブルの対応方法は慎重に考えなければなりません。人によって音に対する敏感度合いは様々で、被害を訴えている方の

話を鵜呑みにすると、客観的な状況を掴み損ねる恐れがあります。

また、マンションにおける音の伝わり方は単純ではなく、音のする部屋とは全く違う部屋が発信源という場合もあります。

そのため、不用意に犯人と決め付けて厳しく注意してしまうと、余計なトラブルを招くことにもなりえます。

 

・家賃滞納

家賃滞納も近年増えているトラブルです。一時的に払えない、もしくは必ず払う意思がある場合は待ったほうがいいこともあります。

しかし、明らかに払う意思がなく開き直ってる場合早い対応が必要です。

まずは、電話や催促状、請求書の送付、訪問などで支払いの交渉をしましょう。それでも、応じない場合は、連帯保証人に連絡をして

督促状を送付します。

このような交渉をしても家賃滞納が続くようであれば、強制退去の法的手続きをとるしかありません。

 

・汚部屋

報道番組でもたまに特集が組まれるような、賃貸物件が汚部屋になってしまうトラブルも少なくありません。

近隣入居者から異臭がする、ゴミがベランダまであふれているなどの、クレームで発覚することが多いトラブルです。

場合によっては、フローリングや壁の腐食、室内設備の故障などのトラブルに発展します。

ただし、たとえゴミであっても入居者の所有物になります。

大家さんであっても勝手に捨てることはできません。そのため、〇〇日までにごみを処分してください、期日までに対応がなければ処分並びに

賃借契約解除を行いますなどの、内容証明郵便を送りましょう。

内容証明を送ってもごみを処分する権利はありませんが、合法的に対応をすることが可能です。

 

・家賃の値下げ交渉

入居を検討している人や長年住んでいる入居者は家賃の値下げを交渉してくる場合があります。

この場合、家賃を下げる気はないとしてもまずは検討している態度をとりましょう。そして、周辺の家賃相場や共用部分で劣化してる部分はないか確認しましょう。

家賃相場と、同党だったり、設備や共有部分に不具合がなかったりするのであれば値下げの必要はありません。ただし、

設備に不具合があったり管理がずさんだったりするとクレームになってしまうことがあります。

日頃から、値下げ交渉に繋がらないようにきちんと対処をしておくことも大切です。

 

まとめ

賃貸管理は、文字どおり事業の経営です。

大切な自分の資産を活用して事業を行うのですからまずは賃貸経営のメリット・デメリットの理解に努めましょう。

そして、管理会社任せ、人任せにせず、事業計画を入念に立てて見通しを付けたうえで、賃貸経営をスタートしましょう。

 

人口減少と空き家増加の課題

 

 

近ごろ話題になることの多い空き家問題。福岡県大牟田市では、住宅系部門管轄の空き家を活用するために、福祉系部門の民生委員が調査を行いました。空き家の状態を調査し、住宅を必要とする人とのマッチング、他の支援団体と連携して包括的な生活の支援を目指しています。

他の自治体のお手本になりそうなこの取り組み、大牟田市都市整備部建築住宅課の今福信幸さん、西山妙佳さん、NPO法人大牟田ライフサポートセンターの牧嶋誠吾さん、三浦雅善さんにお話を聞きました。

大牟田市の空き家問題と住宅要確保配慮者の実情とは

福岡県大牟田市は、かつては炭坑節でも知られる三池炭鉱が栄え、1960年代には20万人以上の人でにぎわう、日本の高度経済成長を象徴する街でした。しかし閉山と共に人口は減り、現在では多くの自治体と同様に、人口減少や高齢化などの問題を抱えています。

増え続ける空き家問題も深刻です。
大牟田市の今福さんによると、2019年に実施した調査では2912件の空き家が存在し、2016年からわずか3年で1138件も新たに空き家が増えているとのこと。現状のまま利用できる空き家が減少し、修繕が必要だったり利用が困難だったりする建物が増えていることがわかります。

 

大牟田市では、人口の減少とともに空き家の増加も問題になっている(資料提供/大牟田市)

大牟田市では、人口の減少とともに空き家の増加も問題になっている

一方、何らかの事情で住まい探しに困っている高齢者、障がい者、ひとり親世帯、外国人など「住宅確保要配慮者」と呼ばれる人たちも増え続けています。

これらの問題を解決しようと、大牟田市では、2012年から行動を起こし始めました。同年、住まい探しが困難な人たちの入居や生活をサポートする団体としてNPO法人大牟田ライフサポートセンターが誕生。翌2013年には、不動産関係団体や医療・福祉関係団体らと情報を共有し、円滑に居住支援を行うための場として「大牟田市居住支援協議会」が立ち上がりました。現在、協議会の事務局は大牟田市の建築住宅課と大牟田ライフサポートセンターが共同で担っています。

大牟田市では全国の取り組みと比べてもかなり早い時期から見守りや、空き家を居住支援に利活用するためのワークショップを行い、関係者間で問題を共有することが居住支援協議会立ち上げの素地となっていった(資料提供/大牟田ライフサポートセンター)

大牟田市では全国の取り組みと比べてもかなり早い時期から見守りや、空き家を居住支援に利活用するためのワークショップを行い、関係者間で問題を共有することが居住支援協議会立ち上げの素地となっていった(資料提供/大牟田ライフサポートセンター)

 

空き家の実態を調査するために、民生委員と学生が活躍!

現在は大牟田ライフサポートセンターの事務局長であり、当時は大牟田市の職員だった牧嶋さんは、増え続ける空き家を住まいの問題を抱える人たちの受け入れ先として利活用できないか、と考えました。そのためには、まず空き家が「市内のどこに、どれくらいあるのか」の把握と「空き家の老朽状態の確認」をする必要がありますが、市の財政は厳しく、予算もなければ人も足りません。

大牟田ライフサポートの牧嶋さん(右)。かつては大牟田市職員として、住宅部局と福祉部局両方の仕事を経験したため、双方の仕事や考え方も理解した上で「居住支援とは暮らしの基盤を整えることで、決して箱だけを提供するものではない」と話す(写真撮影/りんかく)

大牟田ライフサポートの牧嶋さん(右)。かつては大牟田市職員として、住宅部局と福祉部局両方の仕事を経験したため、双方の仕事や考え方も理解した上で「居住支援とは暮らしの基盤を整えることで、決して箱だけを提供するものではない」と話す(写真撮影/りんかく)

そこで牧嶋さんたちは300人の民生委員(※)に協力を求めることを思いつきました。ところが、当初は相談しても「厚生労働大臣から委嘱され活動している民生委員は、自治体職員の下請けではない」「なぜ私たちがやらなくてはならないのか」と反対意見も多かったのだとか。

「日ごろから築いてきた人間関係を武器に『空き家利活用は地域の問題でもある』ということを何度も説明し、最終的には24校区の内、23校区に協力してもらうことができました。地域で支える認知症の取り組みなど、長期にわたる行政と民間(民生委員)の協働という土壌があったからできたのだと思います」(牧嶋さん)

※民生委員/厚生労働大臣から委嘱された非常勤の地方公務員で、地域住民の立場から生活や福祉全般に関する相談・援助活動を行う。地域社会のつながりが薄くなっている現在、子育てや介護の悩みを抱える人や、障害のある方・高齢者などが孤立し、必要な支援を受けられないケースがある中、身近な相談相手となって、支援を必要とする住民と行政や専門機関をつなぐパイプ役を務めている

 

民生委員たちは地域に精通しているので、地図を見ただけでどこに空き家があるかを把握していることも多い。この空き家調査でデータだけではわからなかった、市内の空き家の位置や数が明らかに(画像提供/大牟田市)

民生委員たちは地域に精通しているので、地図を見ただけでどこに空き家があるかを把握していることも多い。この空き家調査でデータだけではわからなかった、市内の空き家の位置や数が明らかに(画像提供/大牟田市)

さらには、市内の高等専門学校の建築学科の先生に相談し、学生たちに空き家の老朽度調査を実施してもらえないかを相談。結果、かかった費用は民生委員に渡した蛍光ペン代と学生たちのアルバイト代を合わせて、約90万円でした。

 

空き家と、住まいに困っている人たちをつなぐ仕組み

この調査で得られた情報をもとに、牧嶋さんたちは本格的な空き家を利活用した居住支援に踏み出します。
2014年には、住宅確保要配慮者向けWEB情報システム「住みよかネット」を立ち上げました。入居を希望する人と空き家のオーナーをマッチングするだけではなく、入居してからの暮らしも見据えた「居住支援」の相談窓口へとつなげるものです。

「住みよかネット」では、空き家の所有者などから許可を得た物件情報を掲載。借りたい人や購入したい人が物件を探せるだけでなく、問い合わせることで居住支援の窓口につながる(画像提供/大牟田市居住支援協議会)

「住みよかネット」では、空き家の所有者などから許可を得た物件情報を掲載。借りたい人や購入したい人が物件を探せるだけでなく、問い合わせることで居住支援の窓口につながる(画像提供/大牟田市居住支援協議会)

大牟田市の居住支援では、住宅の確保から入居支援まで、大牟田市居住支援協議会が窓口となりつつ、入居後の生活支援に関しては居住支援法人であるNPO法人大牟田ライフサポートセンターなどの支援団体が主となって支援していく体制をとっています。ここまでが住宅施策、と区切ってしまうのではなく、互いに連携をとり、必要なところを補い合いながら業務を分担しているところが特徴的でしょう。

「私たち大牟田市居住支援協議会は、空き家所有者と入居希望者を結びつける『仲人』です。オーナーに行政や福祉の窓口に相談にきた相談者の人となりを紹介しながら、現場でお見合いをしてもらいます。この、第三者が間に入るトライアングルの関係と運用の仕組みづくりが重要なんです」(牧嶋さん)

入居後も支援団体が間に入ることで、オーナーが直接対峙するのを避け、入居者に起こっている問題解決のための相談に乗ることができるわけです。

 

住宅確保の相談から生活支援までの流れ。「居住支援とは、ただ家を紹介するのではなく、空き家物件の確保から、入居サポート、さらには入居後の生活の支援まで、住宅と福祉、両方の支援が必要」だと、牧嶋さんは言う(画像提供/大牟田市)

住宅確保の相談から生活支援までの流れ。「居住支援とは、ただ家を紹介するのではなく、空き家物件の確保から、入居サポート、さらには入居後の生活の支援まで、住宅と福祉、両方の支援が必要」だと、牧嶋さんは言う(画像提供/大牟田市)

住宅の確保には、空き家を提供するオーナーさんを継続して募集しています。
空き家を貸し出すことができれば、オーナーさんはその収入を建物の維持管理に充てることが可能。空き家のまま放置して劣化が進み、倒壊の恐れや相続の際のトラブルの原因になったりするリスクも減らせるので、オーナーさんにとってもメリットです。

オーナーさんから相談が入ると、市役所の建築住宅課の職員と大牟田ライフサポートセンターのスタッフとが一緒に現地に空き家調査に赴きます。

「大牟田市に空き家の相談が寄せられる件数は年間約80件ほど。オーナーさんの希望を聞きながら利用が可能か、取り壊さないと危険なのか建物状況を調査し、使用可能な場合は利活用の道をオーナーさんと共に相談していきます。行政職員が一緒に同行することでオーナーさんも安心して活用を検討できます」(大牟田ライフサポートセンター 三浦さん)

「調査に伺うと、家財道具の処分などを希望されることもあります。市としては特定の会社を紹介することができませんが、NPO法人である大牟田ライフサポートセンターなら直に紹介できるので、オーナーさんも、市としても助かります」(大牟田市 西山さん)

 

大牟田市職員の西山さん(左)と大牟田ライフサポートセンターの三浦さん(右)(撮影/りんかく)

大牟田市職員の西山さん(左)と大牟田ライフサポートセンターの三浦さん(右)(撮影/りんかく)

困っている人たちにとって「本当に必要な支援は何か」を見極める

大牟田市では、居住支援を行う際、相談に来る人たちに必ずお願いしていることがあります。それは、居住支援協議会の事務局である大牟田市の職員と大牟田ライフサポートのスタッフ以外に、メインとなる支援者をつけること。最初の相談時点で支援者が誰もいない場合は、支援団体への紹介も行っているそうです。

また、大牟田市においては近年、ひとり親世帯、特に母子家庭の困窮者が目立つと言いますが、住まいに困っている人の事情はさまざま。単純に高齢者の問題、低所得者の問題、といったように分類して区切れるものではありません。

「住まい探しだけに困っているケースはごくわずかです。多くの場合、仕事やそれに伴う収入、医療・介護の必要性など、さまざまな問題が複雑に絡み合っているため、よくよく話を聞くと、その人に必要なのは住まいではなく、生活に紐づく複数の問題だったりします。

現場でメインとなる支援者とは別に、私たち大牟田ライフサポートでは、面談を通じた適切なアセスメント(その人自身や周りの人、環境に及ぼす影響を把握すること)によって、相談内容の本質はどこにあるのか、必要な支援は何かを見極めるのです」(牧嶋さん)

住まい探しの相談にくる人は、住まいだけでなく、さまざまな問題を抱えている場合が多い。相談者ごとに本当に必要な支援をしていくため、居住支援協議会以外にメインとなって支援をしていく団体をつけるようにしている(資料提供/大牟田ライフサポートセンター)

住まい探しの相談にくる人は、住まいだけでなく、さまざまな問題を抱えている場合が多い。相談者ごとに本当に必要な支援をしていくため、居住支援協議会以外にメインとなって支援をしていく団体をつけるようにしている(資料提供/大牟田ライフサポートセンター)

居住支援を継続していくためのポイントや課題は?

大牟田市の住宅部局と福祉が連携をとって、居住支援を押し進める事ができるのは、以前から協働の土壌があったことが大きいでしょう。さまざまな分野の人が集まって福祉的視点からの空き家利活用などについて話し合うワークショップを開催するなど、コミュニケーションを重ねてきました。

「民生委員だったり、地域の住民だったり、民間の企業とも関わっていく必要があります。居住支援を広げたいと考えるときも、最初の一歩は現場で属人的な関わりをきっかけに動いていくことが大事です」(牧嶋さん)

そして、今後改善すべき点を聞いたところ、間髪を入れずに「運営費です!」との答えが返ってきました。

「基本的に、お金にゆとりのない人を支援の対象者にしています。既にある制度に則った支援には補助金がつきますが、NPO職員の人件費など、運営費を確保していくのも大変だということを基礎自治体にもっと知っていただきたい。居住支援は行政サービスの一環だという認識がもっと広まってほしいと思います」(牧嶋さん)

居住支援だけで事業を成り立たせるのは至難の業。継続的な支援のための運営費を確保していくことが大牟田市のみならず、居住支援の現場の課題といえそうです。

大牟田市都市整備部建築住宅課課長の今福さん。牧嶋さんと一緒に長年大牟田市の住宅施策、居住支援を推し進めている(撮影/りんかく)

大牟田市都市整備部建築住宅課課長の今福さん。牧嶋さんと一緒に長年大牟田市の住宅施策、居住支援を推し進めている

空き家をセーフティネット住宅として活用していくことは、国としても目指しているところです。しかし、うまく推し進められている自治体はまだまだ多くはありません。そんな中で、大牟田市は非常にうまく、住宅と福祉が連携している例と言えます。

300人もの民生委員が空き家調査に動いたり、市の職員とNPO法人が常に一緒に活動を行う大牟田市の居住支援は、常日頃から良好な人間関係を築いてきたからこそ。大牟田市の協働の姿勢は、他の地域にも参考となるヒントがいろいろとあるのではないでしょうか。