賃貸併用住宅とは?
賃貸併用住宅とは、1棟の建物に自宅部分と賃貸部分がある住宅のことです。賃貸部分には、アパートやマンションといった賃貸住宅のほか、店舗や事務所なども含みます。
賃貸併用住宅をつくる目的は、自宅に必要な間取りを確保したうえで、余ったスペースを有効利用して家賃収入を得ることにあります。
賃貸併用住宅が注目されている理由として、まずローン返済の負担軽減が挙げられます。
ほかにも年金不足の問題がクローズアップされているなかで、家賃収入が老後資金を確保する有効な手段になり得ることもあります。
また、少子化や核家族化の進行により1世帯当たりの家族数が減少しているため、広い自宅スペースが不要になり、その分を収入源となるスペースに利用したいという人が増えていることなども理由のひとつです。
賃貸併用住宅の建て方
賃貸併用住宅の建て方は、1棟の建物の中で自宅部分と賃貸部分をどのように配置するかによって、以下の3タイプに分けられます。
横割りタイプ(例:建物の東側が自宅、西側が賃貸)
縦割りタイプ(例:3階建ての1階と2階が賃貸、3階部分が自宅)
混合タイプ(例:3階建ての1階と2階の一部が賃貸、2階の一部と3階が自宅)
建て方は、建てる人の考えや、市場ニーズ、敷地の広さ、法的な制限などによって決まります。
賃貸併用住宅のメリット
入居者の家賃を住宅部分のローンに充てることができる
一戸建て住宅の場合、住宅ローンは借りた人が自分の給料などから返済しますが、賃貸併用住宅の場合は、賃貸部分の家賃を住宅ローンの一部または全部の返済に充てることができるので、ローンを借りた人の返済負担が軽減されます。
また、家賃が高い地域や賃貸部分の割合が高い建物であれば、ローンの返済をまかなったうえに、さらに収入を得られるケースもあります。
老後の“自分年金”になる
住宅ローンの返済が終われば、家賃収入から管理費や固定資産税などの諸経費を差し引いた後の収入が得られます。この利益をいわゆる“自分年金”にできることもメリットといえます。長寿化が進む日本では老後の年金不足が問題になっていますが、年金収入に家賃収入がプラスされれば、老後資金の不安を解消できる可能性が高まります。
住宅ローンが利用でき、住宅ローン控除も
自宅部分の面積が建物の床面積の2分の1以上を占める場合は、住宅ローンが利用できます。一般的に住宅ローンはアパートローンよりも金利が低いため、借りる人にとって有利な条件になります。
なお、住宅ローンを利用する場合、前述の2分の1以上の要件に加え、自宅部分の床面積が40m2以上(※)あれば、自宅部分のみ住宅ローン控除が適用されます。また自宅部分を賃貸部分と分けて区分登記する場合も同じく、建物全体ではなく、自宅部分についてのみ住宅ローン控除が受けられます。
ただし、住宅ローンの金利のほうが低いという理由から、自宅部分の比率を高めすぎてしまうのはおすすめできません。賃貸部分の割合が大きいほど入居者が増え収入も増えるので、自宅部分の比率が高いほど収益は悪くなってしまいます。複数の事業プランのなかから、バランスを考慮してより良い選択をすることが大切です。
※2021年度から住居面積が40m2以上に緩和されました(ただし40~50m2未満の住宅については、合計所得金額1,000万円以下という所得制限あり)
賃貸併用住宅のデメリット
メリットが多い賃貸併用住宅ですが、デメリットを押さえておくことも大切です。
ローンの借入額が増える
賃貸部分があるので、一戸建て住宅と比べると建築費も高くなります。自己資金が少なければローンの借り入れを増やすことになり、返済額も増加します。もしも入居率が大幅に低下したり家賃が大きく下落したりした場合には、家賃収入が減りローン返済をまかないきれなくなります。その際は家賃収入以外の所得からローンを返済しなければならず、家計が圧迫される恐れがあります。
同じ建物に入居者が住むわずらわしさ
自宅を賃貸併用住宅にした場合、多くの他人が同じ建物に住むことになり、入居者と顔を合わせる機会も多くなります。オーナーがすぐ近くに住んでいるという理由で入居者からさまざまなクレームが直接寄せられたり、トラブルに巻き込まれたりしてしまう可能性もあります。
また、建て方や構造によっては、隣室や上下階からの騒音、夜中の排水音などが気になることも考えられます。
賃貸併用住宅を建てる2つのポイント
2つの絶対条件とは?
賃貸併用住宅を建てるためには、まず2つの条件をクリアする必要があります。
1.立地条件
せっかく賃貸部分を設けても、入居者がいなければローンの返済もできなくなります。長期的に入居者ニーズがある立地であることはとても重要なポイントです。
また入居者ニーズがあっても家賃が低いエリアの場合、家賃収入で賃貸部分のローン返済をまかなうのがやっとで、自宅部分のローン返済にはあまりプラスにならないこともあります。
そもそもこのようなエリアではローンの借り入れができない可能性もあるため、まずは賃貸市場として成り立つエリアかどうかの調査が重要です。
2.敷地条件
敷地が狭すぎると、住居部分を確保するだけで敷地を目いっぱい使ってしまい、賃貸スペースをつくる空間的なゆとりがなくなってしまいます。
何坪以上なければいけないという決まりはありませんが、狭小地の場合は、容積率が高いことも重要です。容積率とは、敷地に対する建物の延床面積の限度をいいます。たとえば同じ広さの土地でも、容積率が100%のエリアと300%のエリアでは建築可能な延床面積に3倍もの差があります。
実際には、敷地面積や容積率だけではなく、道路幅や高さ制限などさまざまな規制をクリアしながら計画を立てることになるため、敷地に対してどれくらいの規模の建築が可能かをチェックする必要があります。
プランニングのポイント
賃貸併用住宅のプランニングをするときには、特に「動線」と「視線」に注意することが重要です。
動線とは、道路から玄関までのアプローチのことです。自宅と賃貸部分の入り口動線を別々にして、できるだけ入居者と顔を合わせないで済むように設計をします。
また、日常生活において入居者と視線を合わせないような工夫も大切です。たとえば入居者のリビングの前を自宅のアプローチにしてしまうと、思わず入居者と目が合ってしまい、気まずい思いをしてしまいます。
お互いにストレスがかからないようなプランニングをすることが大切です。
管理の注意点
賃貸併用住宅では、1棟の建物にオーナーと入居者が住むことになるため、必ず間に管理会社を入れることをおすすめします。近くだからといってオーナーが慣れない対応をしてしまうと、入居者との関係自体が悪化してしまう恐れもあります。
入居者からの要望やトラブルは、オーナーが直接受けることはせず、プロである管理会社が窓口になってもらうことが重要です。
入居者とは、よき隣人としての関係を構築し維持することが第一です。
まとめ
立地条件と敷地条件を上手に生かせば、賃貸併用住宅はとてもメリットが大きい住宅です。
デメリットやリスクもしっかりと認識し、お互いにストレスのないように工夫すれば、経済的なゆとりを生むことができるひとつの方法として検討する価値があるのではないでしょうか。